2005年10月9日に開催されました「第2回ゆうメイト全国交流会」において、「もっと知ろうよ ゆうメイトの権利」と題して、成見暁子弁護士からの講演を受けました。
 講演は時間的制約もあり、いただいたレジュメの全てについて具体的に話していただく時間がありませんでしたが、ゆうメイトの置かれている雇用と労働条件の問題点を中心としつつ、正規職員と非正規職員との不合理な差別を許さない闘いを職場でやっていくことが大切であるとの提起を受けました。
 以下に、成見弁護士の講演要旨を掲載します。「講演要旨」は、交流会に提起していただいたレジュメをもとに、そのレジュメに沿って講演内容をまとめています。
 なお、「講演要旨」は、ゆうメイト全国交流会運営委員会がまとめたものであり、文責は「ゆうメイト全国交流会運営委員会」にあります。

(□枠内は、成見弁護士レジュメ項目)

成見暁子弁護士プロフィール

 南大阪法律事務所
 ・NTTリストラ事件  ・セクハラ解雇事件  ・自衛隊イラク派兵差止訴訟
 ・中国残留孤児訴訟  

 現在 大阪弁護士9条の会事務局
    大阪弁護士会憲法問題特別委員会事務局

1 はじめに
 ・郵政関連の恒常的業務を支える「ゆうメイト」
 ・「官から民へ」の新自由主義的「改革」と公務の民間化の流れ〜郵政民営化
  :「量的民営化」と「質的民営化」

・総務省の調査では、役員を除き5千万人いる労働者の中で32.3%が非正規雇用。

・ゆうメイトは、生田総裁の国会答弁によると、8時間ベースで11万6,904人。
 郵便事業だけを見れば、常勤職員11万4,158人、非常勤職員10万3,980人。
 8時間ベースではなく人数で計算すると、非常勤職員16万人とも言われている。

・今日の主要なテーマではないが、現在、国や地方自治体が担っていた福祉や生活に密着し
 たサービスがどんどん民間に移されている。そこでは、市場主義、競争原理、言ってみれ
 ば弱肉強食の権利こそが大事、そこに価値を置いて国や行政の政策も市場原理の都合に変
 えていこう、邪魔になる規制は取り払っていこうという流れを示している。民間にできる
 ことは民間に、そうすると福祉、教育、都市交通、清掃、給食、保育なども民間に移して
 いく、これは行政の責任を小さくすることで非常に問題が大きい。郵政民営化もこの流れ
 の中にある。

2 労働者の権利
 ・憲法〜個人の尊厳と人間らしく生きる権利
   ・13条:個人の尊厳、幸福追求権
   ・27条:労働条件の法定(〜労働基準法など)
   ・28条:労働基本権〜団結権、団体交渉権(〜特定独立法人等の労働関係に関する法律など)
 ・「労働者」→労働者保護法令、法理で保護される←→cf.請負、委託
   :使用従属性の実態から判断される
 ・賃金、労働時間、有給休暇、休憩、安全衛生、社会保障・・・など



・憲法は日本の最高法規。これに反するいかなる法律も条例も行政書物も効力を持たない。
 是非、憲法を読んで自分の中で考えてもらいたい。

・13条を基に25条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
 との生存権を定めている。

・27条では、すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。その後に賃金、就業時間
 、休息、その他の勤労条件の基準は法律でこれを定める、となっており、具体的に労働条
 件の最低基準を定めたのが労働基準法。また、最低賃金法、男女雇用機会均等法などが定
 められている。

・28条は、勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保
 障する、となっており、憲法は、労働者が使用者と対等に交渉できるために憲法上の権利
 として団体交渉権、団体争議権、ストライキなどを保障している。

・労働組合法では、7条で労働者が労働組合の組合員であること、組合に加入したり組合を
 結成したり、正当な行為をしたことによって不利益な取扱はできないとも定めている。

・国家公務員も憲法27条、28条が基本的にあてはまる。ゆうメイトも労働条件などにつ
 いて、団体交渉を通じて当局と交渉して条件を決めていくことが保障されている。

・ただ、残念ながら国家公務員には、争議権についてこれを認めないという規定になってい
 る。しかし、これは世界の流れから見ても日本は特殊に規制をしすぎているという批判が
 ある。

・労働基準法15条で使用者は賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなくてはならない
 ことが決められている。ゆうメイトの雇用に際しても、「勤務条件を書いた通知書」を交
 付しなければならない。

・また、労働基準法では、賃金の通貨払、時間外労働の割増賃金の支給、年休の付与などが
 決められ、ゆうメイトも当然その対象となる。ただ、この労働基準法は最低の基準である
 。この労働条件を労働者が団結してよりよいものにしていくことが大事。

・残業は、過半数を組織する労働組合との協定(36協定)がないとさせられない。ここで言
 う過半数は、パート、契約社員、非常勤職員を含めての過半数であり、正職員だけの過半
 数ではない。

・解雇は制限されている
  :法律で禁止(ex.業務上の負傷・疾病の療養中とその後の30日間、産休中とその後の
   30日間、労働組合の結成や加入、国籍や思想、性別を理由とする解雇など)
  :労働基準法18条の2新設「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当で
   あると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする」〜解雇権
   濫用の法理を条文化
  :整理解雇の場合も
・雇止めも一定の場合には制限される
  :ex.東芝柳町工場事件S49.7.22最高裁、日立メディコ事件S61.12.4最高裁

・雇用関係が終了すると言うのは大きく分けると@使用者の一方的な意思表示で終了する解
 雇、A雇止め、があり、この二つは大きく違う。

・期間の定めがない雇用契約で途中で使用者が一方的に打ち切る場合は解雇。あるいは期間
 の定めがある場合でも、使用者が一方的に期間の途中で辞めさせる場合も解雇。

・雇止めというのは、期間が定められている場合に、この期間が終了する場合をいう。

・解雇については、判例上積み上げられてきた解雇権濫用の法理が明文化され、労働基準法
 の18条の2ができ、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められ
 ない場合は、無効」と明示された。

・「整理解雇」(会社の生き残りをかけて首を切る)については、労働者には何の落ち度もな
 いので、解雇については解雇権濫用の基準をもっと厳しくしている。

・「雇止め」の場合理屈上は、決まっている期間が終了する場合、解雇と違って何の理由も
 なく期間終了ということで雇用関係が終了してしまう。自動的に終了していしまうという
 こと。

・しかし、「雇止め」について、負けても負けても沢山の人が裁判で闘ってきて、雇止めも
 自由ではないというルールを勝ち取ってきている。

・東芝柳町工場事件では、正規従業員と臨時工と言われる労働者がほとんど変わらない仕事
 をし、人数も本工より臨時工の方が多く、2ヶ月の雇用更新を何回も続けていたがその人
 たちが雇止めになったときの裁判の判例で、最高裁は、「一応2ヶ月として期間が決めら
 れていたけれど、期間の満了毎に当然更新の手続きを重ねて、実態としては期間の定めの
 ない労働契約と実質的に異ならない状態になっていた。」と認定した。

3 郵政非常勤職員「ゆうメイト」の法的地位
 ・日本郵政公社法50条「国家公務員」
 ・期間の定めのない雇用が原則〜しかし、任期1日の日々雇用の矛盾
   :国家公務員法附則→人事院規則
 ・雇止めに対して冷たい司法
   :公法上の「任用行為」と私法上の「雇用契約」の形式的区別で一蹴
 ・正規職員との労働条件の格差
 ・民営化後の新会社へ雇用確保の問題

・日本郵政公社法50条で「公社の職員は国家公務員である」との規定があり、ゆうメイト
 も当然国家公務員となる。

・国家公務員、公務員関係は、元々期間の定めのないのが原則。公務・公共サービスを提供
 するには身分の保証というのが強く求められているから。

・なぜ、ゆうメイトのような日々雇用が認められるか。国家公務員法60条に「臨時的任用
 」という緊急の場合とか、臨時の官職に関する場合とか一定のごく例外的な場合に臨時期
 限付というのを認めている。この法律に附則があり、職務と責任の特殊性に基づいて、別
 に法律又は人事院規則でこれを規定することができるとし、基本的に認められない非常勤
 職員、期限付職員を生み出している。

・しかし今や、例外的任期付き、期限付の非常勤職員が、大事な事業を担っているというこ
 とになっている。

・司法は、国家公務員の採用とそして任用という行為と私法上の民間企業の雇用契約とは違
 うということで、形式的な区別で一蹴し、ゆうメイトさんの雇止めを救済するのは厳しい
 状況。

・しかし、「恒常的な継続的な定員を補うために特別の例外的な日々雇用を使うというのは
 適合性に疑問がある」とした平成14年の岡山地裁の判断もある。

・もう一点は、正規職員との労働条件の格差の問題がある。やっていることは同じではない
 か?ということで、正規職員に近づけることが大事。

・また、郵政民営化では正規職員は雇用が承継されるが、ゆうメイトの雇用をきるというの
 は許さない運動が非常に大事になってくる。

4 民間労働者の状況
 ・正職員の減少と非正規労働者(パート、アルバイト、派遣、有期雇用など)の増大〜総人
  件費の抑制・・・差別化・貧困化
 ・年功序列賃金から能力・成果主義賃金へ
 ・労働条件の切り下げ
 ・労働法制の規制緩和(労時準法、派遣法など)

・民間の労働者を守る労働協定自体がどんどん切り崩されている。

・今考えられているのは、労働時間規制を縮小。あるいは、解雇が問題となった紛争で使
 用者が金銭を払って解決する。

・このような状況の中で、よりよい法律を作っていくために、力を合わせていかねばなら
 ない。

5 人間らしく働き生きる職場、社会をめざして〜人間らしく働くルールの確立を
 ・不当な労働条件の切り下げ、解雇、雇止めを許さない
 ・正規、非正規雇用の均等待遇をめざして
 ・使用者に使い勝手のよい、労働者を使い捨てる労働法制を許さない
 ・仲間と手をつないで〜職場・全国のゆうメイトと、正規・非正規、公務・民間
  すべての労働者と

・ヨーロッパ、EUでは正規、非正規の均等待遇について早くから導入して進められてい
 る。

・日本でも平成5年に「パートタイム労働法」ができたが、国家公務員には今のところ適
 用がない。

・「パートタイム労働法」には、均等待遇とまでは書いてないが、均等な処遇に有意しな
 ければならないとなっている。

・正規職員と非正規職員の不合理な差別を許さない闘いを職場でやっていくことが大事。

・労働法制の改悪はゆうメイトにとっても身に迫った問題。労働者全体でこれを許さない
 闘いが重要。

・裁判をしながら思うのですが、やはり裁判所が最後に決めてくれるからとかじゃなくて
 、裁判の時も勝てるかどうかは労働者と周りの労働者の連帯が使用者を押し込んでいく
 ことが、裁判を闘う上でも非常に大事になる。

・一人で悩まずに、仲間と手をつないでいく、使用者に迫っていく、労働条件の改悪を許
 さないぞ、解雇、雇止めを許さないぞ、という大きな流れを作っていくことが大事だと
 思います。

                                    以 上

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